野球少年、野球少女のお父さん、お母さん、そして指導者の皆さんにとって役に立つ、勉強になる本を紹介します。
以下サイトで紹介されているのは、スポーツライター大利実さんの『高校野球 継投論』(竹書房)です。
高校野球の試合における継投について書かれた本ですが、その中で当協会の特別顧問でもありトミージョン手術の権威である慶友整形外科病院の古島弘三先生に、ジュニア期の投球障害についてお話を聞いている章がありますので、一部をご紹介します。
https://baseballking.jp/ns/200215
疲労してからの練習は故障するリスクが高くなる
ーー「予防」という観点で、指導者が考えるべきことはありますか。
古島 すべての指導者にお願いしたいのは、「選手のヒジは宝物。そのぐらい大切なものだと思って、育ててください」。選手自身にとっての財産です。
ーーグッとくる表現ですね。
古島 プレーしている子どもたちが「もっと投げたい」「勝ちたい」と思うのは当然のことです。指導者は、その気持ちを尊重しつつ、でも体のことに最大の注意を受ける存在であってほしい。特に身体的に未成熟な高校生までは、指導者が守ってあげなければいけないと思います。
ーー今は指導者が投げさせている側面も否定できないですね。
古島 練習時間や球数が、どれだけ投球障害に関係しているのか。いくつかのデータをご紹介しましょう。ヒジの内側を痛めて、当院を受診した301人の小学生にアンケートを取ったところ、そのうちの約80パーセントの子どもが、「土日で1日5時間以上の練習をしている」と答えています。一方で、練習時間が3時間以下のチームの場合、ヒジを痛めている子はほとんどいないというデータが出ているのです。
ーー練習時間が多くなるということは、必然的に球数も多くなると考えられますね。データは小学生ですが、中学生にも高校生にも当てはまることでしょうか。
古島 もちろん、当てはまります。練習時間が長くなりすぎると、疲労もたまりやすくなります。疲れを感じるということは、体自体が自己防御反応をしているということです。「それ以上続けるとケガをするよ」という脳からのサインです。疲労してからの練習は集中力もなくなり、筋力のパフォーマンスも下がり、一気に練習の効率が低下します。したがって故障するリスクがどうしても高くなります。
ーー疲れを感じてから投げ込むことによって、力みの抜けたいいフォームを身に付けることができると考える指導者もいると思います。
古島 それで、生き残ったピッチャーはほんの一握りではないでしょうか。生き残った人が言うので、なおさらたちが悪いのですけど。その裏で多くのピッチャーが投球障害によって、野球を辞めてしまっています。疲労を感じるてくると、フォームが崩れてきて筋出力も落ちる。その状態で数を投げようとしても、いいことはありません。確率の低い方法で、しかも昔ながらの方法で、いまだに信念を持ってやっていらっしゃる指導者がいることが非常に残念です。