学童野球で初実施
”小学生の甲子園”で新たな改革が始まっています。
2019年8月18日に開幕した全日本学童軟式野球大会(東京・神宮球場など5会場で開催)で実施している全選手の肩肘検診と球数制限(1人1日70球)です。
選手の体を守る試みを監督らはどう受け止めているのでしょうか。
18日、検診会場は子どもたちのにぎやかな声であふれました。
それでも検診を受ける時の顔は真剣そのもの。
エコー(超音波)検査結果をみた医師から「映像はきれい。大丈夫だよ」と声をかけられ、ほっと笑顔を見せる子。
一方、「いま痛みはないけど要注意だよ」と診断され、肩を落とし気味の子も少なくありません。
主催者の全日本学童軟式野球連盟(全軟連)は初めて大会参加の全選手(約1千人)に検診を実施。
学童野球では投手、野手にかかわらず約4割が肘、肩に問題を抱えていると言われています。
この時期の故障はその後に繰り返すことがわかっているため、この年代でいかに故障を食い止めるかが大きな問題です。
受け止め前向き
参加51チーム中10人の監督に話を聞くと濃淡はあっても、多くが二つの改革を前向きに受け止めていることがわかりました。
一部に「70球は少なすぎる、100球まではいいのではないか」「複数投手を育てるのは大変」と異論をはさむ指導者もいましたが、「時代の流れ」「子どもたちには将来があるから必要」との意見がほとんどでした。
さらに、「今回の改革で練習からやるようになった」(山形)、「3月から70球でやっている」(奈良)など、2月の球数制限の発表後から見直すチームが出てきています。
検診によって認識を改めてるチームもありました。
「春の大会前、選手に送球の練習を集中的にやって何人かの肘に痛みがでた」と語っていたある監督は、反省的にこう話しました。
「映像で見ると一目瞭然。子供たちのしぐさを普段からしっかり見て、医師と連携してやる必要があると感じました」
全軟連はこの改革に合わせ、練習量を1日3時間以内、年間100試合以内などのガイドラインを作成しています。
しかし、練習の状況を聞くと、平日は2時間ほどながら土、日には少ないチームでも4,5時間。
多いと1日中という実態があるなど、まだまだ課題は残されています。
診断した医師は、「検査結果はチームによってばらつきがありました。普段から球数や練習量を意識しているかどうかの差。やりすぎているチームは、肘の内側に障害の痕跡が多く見受けられました」と指摘します。
痛みが無くても障害を抱えているケースがあり、「張りのようなものが1週間ほど続いたら要注意」とアドバイスをします。
今回の検診を統括した慶友整形外科病院の古島弘三医師はいいます。
「全軟連が全選手の検診に踏み切ったことに敬意を表したい。子どもたちが障害なく野球を続けられるようにするのは指導者の大事な役割。検診や球数制限の目的を理解してもらって、ふだんの練習、試合から見直してもらえるとありがたい」
全日本学童野球大会に参加した監督の意見・感想
【山形】
投球制限は地域でも取り入れたい。複数投手は普段から全員が取り組んでいる。1日2試合の日程も改善して欲しい。
【栃木】
県高野連共催の検診に毎年参加し、今年は投手ではない選手の肘に故障が見つかった。本人に自覚がなく見抜けなかった。
【群馬】
息子も2年前、検診で肘に故障が見つかった。医師による指導者研修を受けてから、痛みが出る子が少なくなった。
【長野】
松本では整形外科団体のエコー検査がある。指導者が外からみているだけでは分からない。半年に1回でもいいと思う。
【静岡】
独自に50~70球をめどにしている。球数制限は子どもたちを守ってくれるものだと思う。
【福井】
球数制限は時代の流れ。いいことだと思う。自分もここ3,4年で考えが変わった。
けがをさせると子どもたちがかわいそう。
【奈良】
以前から連投をしないとの方針でやってきた。肘の痛みを訴えた選手がいて休養させたが、私たちでは痛みの程度が分からない。
【和歌山】
連投が当たり前の時代があったが、今は見方が厳しい。球数制限は時代に沿ったやり方。ただ、投手を4,5人育てるのは大変。
【佐賀】
子どもたちに長く野球をしてもらいたい。10年前から球数制限している。投手もいろんな子が出来るようにし、5,6人いる。
【熊本】
痛くないのに病院で野球肘と診断される子がいる。肘を気にしている様子も見逃さないようコーチ陣と徹底したい。
「医師とも連携」「時代の流れ」
(2019年8月20日しんぶん赤旗より)