野球少年、野球少女のお父さん、お母さん、そして指導者の皆さんにとって役に立つ、勉強になる本を紹介します。
以下サイトで紹介されているのは、スポーツライター大利実さんの『高校野球 継投論』(竹書房)です。
高校野球の試合における継投について書かれた本ですが、その中で当協会の特別顧問でもありトミージョン手術の権威である慶友整形外科病院の古島弘三先生に、ジュニア期の投球障害についてお話を聞いている章がありますので、一部をご紹介します。
https://baseballking.jp/ns/200352
「野球は好きだけど楽しくない」という選手
ーー日本では今でも指導者の罵声が問題視されますが、ドミニカはどのような指導スタイルなのでしょうか?
古島 ドミニカでは、怒声罵声はまったくないですね。選手の楽しそうな声しか聞こえません。指導者たちはみんな、「怒鳴ることによる指導は、子どもたちが萎縮してしまい、思い切ったプレーができなくなる」という考えを持っていました。そもそも、スポーツは「健康な体を作る」「スポーツマンシップを学ぶ」「人間性を育てる」というような目的があるはずですが、日本は軍隊式指導からの流れもあり、「修行」「苦しみを乗り越える」。特に野球はその側面が強いのではないでしょうか。
ーー戦後直後ながらまだしも、もうそんな時代ではありませんね。
古島 そう思いますね。そこから考えていかないといけないでしょう。
ーードミニカの練習時間はどのぐらいなのですか。
古島 小学生では1日3時間で、週5日ほど。その中で試合もやっていました。日本の練習に見慣れていると、「これで終わり?」という練習量です。キャッチボールは5分ぐらいで、ノックもひとり5〜10本で終わり。守備練習では、指導者が前から転がしたボールを捕って、近いところに投げることを何本か繰り返していました。ピッチャーは試合では投げていましたが、ブルペンで投げることはほとんどありません。それでも高校生になると、どのピッチャーも球が速くて、驚かされました。ドミニカの指導者は、「試合をして野球を好きになる。小学生の段階では野球が楽しいと感じさせることだけで十分だ」と言っていましたね。あとは、自分で勝手に練習するようになり、うまくなる。私の外来に受診してくる選手の中には、「野球は好きだけど楽しくない」といった選手が実は多数います。
ーー日本とはまったく違いますね。球速を上げるためにはドミニカではどういったことをやっているのですか?
古島 潜在能力の高さはあるでしょうが、たくさん投げていなくても、体が大きくなれば速くなってくるということです。体の成長とともに球速も上がる。これが、理想なのだと思います。体が小さい、もしくは成長段階で能力以上の速さを求めては故障してしまうのです。その事実も知っておいたほうがいいと思います。