「球児の肘を守る」Vol.1

慶友整形外科病院スポーツ医学センター長の古島弘三医師に聞く

6月から高校野球の夏の甲子園大会が開幕します。

岩手大会決勝で大船渡高・佐々木朗希投手の登板回避が話題になっています。

投手をめぐる過酷な状況がどんな問題をはらみ、その体を知り指導することがいかに大切か。

野球の肘に関する日本の第一人者、群馬県館林市の慶友整形外科病院スポーツ医学センター長、古島弘三医師(48)に聞きました。

(和泉民郎、山崎賢太)

ーー大船渡高・国保陽平監督が連投を回避した件をどのようにみますか。

英 断

将来を見据えた英断だと思います。

他の指導者も国保監督を見習ってほしい。

勝利第一で選手を犠牲にしてはいけないと思います。

佐々木投手は160㌔を投げる好投手ですが、高校生のうちから速い球を投げる場合、それだけ体の負担が大きくなるのは当然です。

さらに野球の体力的なピークは25歳前後。

8,9歳から始めていたとしたら高校生はその半分ほど。

ピークの前に壊しては何の意味もありません。

全力を出すのはいまじゃありません。

国保監督の判断は、佐々木投手の現状と将来を考えた素晴らしいものです。

ただ、これは佐々木投手だけじゃなく、すべての投手にも同様であるべきだと私は思います。

ーー先生のところにはどんな年齢層の選手が訪れるのですか。

肘と肩で合わせて年間800人を超える患者さんがこられます。

年齢層は少年からプロまでですが、小中高校生が8割を占めます。

好きな野球で障害を負い、夢を奪われ涙する子たちが年々増えている現実に大きな危惧を感じています。

ちょっと肘が痛いというだけではなく、肘が曲がらず歯が磨けない、服のボタンを留められない状態になってやってくるのです。

酷 使

ーーそこまでの状態になるのはなぜですか。

一言でいえば練習や試合のやり過ぎです。

肘を壊す子に共通するのは、長時間の練習をし、たくさん投げていることです。

指導者が試合で勝つために一人の優秀な子に連投させる。

将来が有り素質がある子ほど酷使されています。

小中学校の指導者で肩肘の障害を見たことがない指導者はいないのではないでしょうか。

それだけどこでも当たり前に起きています。

練習・試合 やりすぎ

 

(2019年8月5日しんぶん赤旗より)